野辺南部小字(コアザ)考

  前頁にもどる


 野辺南部の地図 クリックで拡大 ⇒ 


●供養塔の畑 下っ原との境、野辺から小川へ技ける道の北側に供養塔がたっている。
 「南無阿弥陀仏」と刻まれていたが、「弥陀仏」しか残っていない。
 左側面に「野辺村講中」とある。年紀は欠けていて不明である。
 高さは約六〇センチ、幅約三〇センチである。
 この供養塔のある付近の畑を供養塔の畑といったのである。
 今は民家がたっている。
 もとこの所には寒念仏(かんねぶつ)の碑がたっていた。
 寒念仏は寒中三十日の間、山野に出て声高く念仏を唱うることから始まり、後には数人で一団となって
 村中を練り歩き喜捨を乞う者もあった。
 聞書では「女性が更年期に身体をこわさないようにと念仏を唱えてお参りした」という。
 
6 下 原(シタハラ) 六四九番地〜八六四番地
 宅地付、宮ケ谷戸の南方、秋川べりに展開し、野辺市営住宅が中心地に建ち並んでいる。
 地名は秋川べりの低地にあって、元村の方からみれば、下の方にある地域なので下原とよんだものであろう。
●わっぷ畑 西方大六天の境、八三九番地から八四〇番地付近にあたる。
 秋川の段丘崖に近い。
 紬く長い畑になっている。
 間口が狭く、おきへ深い。
 開墾してみんなに割振ったのでこの名がある。
 畑としてはやせ地で、ある時代までは野原になっていた。
 
7 大六天(ダイロクテン) 八六五番地〜一〇〇八番地
 秋川の段丘崖上を下原の西に続いている。
 野辺の大六天については『新編武蔵風土記稿』には何の記載もないが、現在九二二番地に大六天が祀られ
 ている。
 この大六天があることによって、この付近を大六天とよぶのであろう。
●大六天(ダイロクテン、デイロクテン) 九二二番地にきれいな小さい祠がある。
 田村建設の敷地の傍で、田村建設が祀っているという。
 普門寺持である。
●まちやばけ、まちや坂 九二七番地。
 六道へ通じる道に坂がある。
 この坂を「まちや坂」といい、すぐ下のハケを「まちやバケ」といった。
 埼玉県人間市の、扇町屋というところへ、戸吹の宮下の人たちなどが馬をひいて米の買出しなどに
 通った時、この坂を登ったので「まちや坂」といったという。
 町屋へいく道は秋留台地の中にも「町屋街道」が通っている。
 扇町屋とはいろいろ交通もあったようである。
 
8 日室塚(ヒムロヅカ)  一〇〇九番地〜一〇八一番地
 大六天の西に隣していて、雨間の一丁目に続いている。
 バス停に日室塚がある。
 野辺の西隅である。
 日室塚の地名は、この地域の南隅に日室塚があったことによる。
 日室塚は五日市街道を南に入った野辺一〇五〇番地付近にあった。
 大六天社のすぐそばにあたる。
 聞書では日室塚は五尺ぐらい(約一・五メートル)の塚であって、その上に太い白檀の木(おにしばの
 ような葉で、長生するが育ちの悪い木)が二本あり、大岳山の一の鳥居となっていた。
 私有地の中にあったので、塚をじゃまにして平らにしてしまった。
 塚をこわしたのは、戦後昭和二十五年(一九五〇)頃であったが、塚の中からは何も出て来なかったという。
 塚の上にあった二本の白檀の木は、神とかかわりのある木であった。
 それはヒモロギとよばれ、塚はヒモロギヅカであったのであろう。
 ヒモロギは、古くは神を祭る時、清浄の地をえらんで、周囲に常磐木を植えて神座としたもの、後世に
 なると、室内や庭上に常磐木を立てて、これを神の宿る所として、ヒモロギとよんだ。
 ヒモロギは古くはヒモロキといった。
 ヒモロギのギが脱落してヒモロとなり、それがヒムロになったものと思われる。
 二本の白檀が大岳神社の一の鳥居といわれたということは、ここから大岳山の神域になることを意味して
 いる。
 ちょうど西北に大岳山が大きくみえる。
 二本の白檀は光明山とか、御岳山の鳥居ともいわれているが、山容からみると大岳山が一番妥当のようで
 ある。
 ただ植えられていた木はビャクダンだということがすこし気になる。
 ビャクダンはビャクダン科の植物で、日本では二種しか自生していない。
 「つくばね」と「かなびきそう」で、『牧野新日本植物図鑑』には、この二種類しか掲げていない。
 ビャクダンは載っていない。
 『万有百科大事典』(植物)には、ビャクダンの写真と説明があるが、東南アジアに自生する
 半寄生的な植物とある。
 こうした特殊な樹木が果して日室塚に植えられていただろうかということである。
 
11 川 原(カワラ)  一二五五番地〜一六四二番地
 秋川の河岸段丘下で、秋川の流れまでの間である。今、砂利採取場や建材会社などの用地となっている。
 全く文字通りの川原である。





以上の出典は、あきる野市東部図書館エル所蔵の「秋川市地名考」より



  前頁にもどる
Copyright (C) 2010@あきる野市 & t.miyokawa. All Rights Reserved.
inserted by FC2 system